昔は「咬みあわせの悪さ」が原因と考えられていました。
今でも「咬み合わせが悪いと顎関節症を初めとして、全身にも色々な不都合が起こる」という意見も
インターネットにはたくさんあります。しかしもしそれが事実なら、歯科医療事情がまだ整っていない
発展途上国には顎関節症患者があふれているはずですが、国際学会に出席してもそのような話しを聞くことは
ありません。では何が原因なのでしょうか。
実は原因を一つに絞ることができないというべきなのです。顎関節症の原因として現在世界的に
認められている考え方は「多因子病因説」といいます。関節や筋に負担のかかる要因は色々あります。
そのような要因がタイミングよくいくつも集まって負担が大きくなり、その人の持っている耐久力を
超えると症状がでるという考え方です。
そのような要因には色々なものがあります。
✿原因となる寄与因子
1.解剖要因:顎関節や顎の筋肉の構造的弱さ
2.咬合要因:不良なかみ合わせ関係
3.精神的要因:精神的緊張の持続、不安な気持ちの持続、気分の落ち込み感覚の持続
4.外傷要因:かみちがい、打撲、転倒、交通外傷
5.行動要因
1)日常的な習癖
歯列接触癖(TCH)、頬杖、受話器の肩ばさみ、携帯電話やスマホの長時間操作、下顎を前方に突き出す癖、
爪かみ、筆記具かみ、うつぶせ読書
2)食事
硬個物咀嚼、ガムかみ、片側でのかみ癖
3)睡眠
はぎしり、睡眠不足、高い枕や固い枕の使用、就寝時の姿勢(うつぶせ寝)、手枕や腕枕
4)スポーツ
コンタクトスポーツ、球技スポーツ、ウインタースポーツ、スキューバダイビング
5)音楽
楽器演奏(特に吹奏楽器)、歌唱(声楽、カラオケ)、発声練習(演劇など)
6)社会生活
緊張が持続する仕事、コンピューター作業、精密作業、重量物運搬、人間関係での緊張
このような要因の一つ一つは大きなリスクとは言えないので、それぞれを症状に対する「寄与因子」と
言います。一つ一つは小さな要因ですが、このような寄与因子が多数集まることによって、
症状を起こすほどの原因となるわけです。
その人が持っている顎関節や顎を動かす筋肉の構造的弱さがあります。
この構造が頑丈であればいろいろな負担に耐えられるでしょうが、弱い場合には症状が出やすくなるでしょう。
「かみ合わせの悪さ」も寄与因子の一つではありますが、この寄与因子だけで症状を起こすケースは
ごくまれであるといえます。さらに症状が起きるきっかけとなる外傷があります。
転倒して下顎をぶつけて顎関節を傷つけ、それがきっかけとなって顎関節症が始まることがあります。
それ以外にも精神的要因としては、例えば不安の持続による筋肉の緊張持続から痛みが生じたり、
顎関節を傷つける場合もあります。さらに、とりわけ多彩な要因として行動学的要因があります。
この要因は生活や仕事など、日常生活の様々な面で現れるもので、患者さんによって持っている因子が
まちまちです。
治療しようとする時にその患者さんの全ての寄与因子を特定することができるなら、それらの寄与因子を
できるだけ除いて行くことで、原因に対する治療を進めることができるのですが、全ての寄与因子を
見つけることは非常に困難です。また見つけることができたとしても、除くことができない寄与因子も
あります。
例えば顎関節の構造がいかにもひ弱だと思われても、それを大きく頑丈にすることはできません。
外傷についても、あらかじめ予測することは無理ですから、この寄与因子も除去することは困難です。
そういった寄与因子のうち、特に行動学的寄与因子の中で、最近見つかった重要な寄与因子があります。
それは必要がない時にも上下の歯を接触させている(かみ合わせている)歯列接触癖です。
普通、口を閉じていても上下の歯はかんでいないのですが、顎関節症患者さんの8割近くの方たちが
口を閉じているときに上下の歯もかんでいるという癖をお持ちでした。この癖があると顎関節や
筋肉にも持続的な負担をかけることから、顎関節症を引き起こしやすくなることが分かってきました。
しかもこの癖を治すと、大部分の患者さんの症状が改善することも明らかになりました。
つまり、この癖が数ある寄与因子の中で最大の要因になっていることが分かったのです。
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